イギリスに6か月以上長期滞在する予定の方々。
イギリスではこうした長期滞在用のビザを申請する際、ビザの申請料金とは別に
NHS(National Health Service, 国民健康サービスという日本でいういわゆる国民保健)
サーチャージという料金を支払わなければなりません。
2024年1月現在のNHSサーチャージは
学生・ワーキングホリデー(Youth Mobility Scheme)ビザ
1年につき£470
それ以外の全てのビザ
1年につき£624
(イギリス国外からのビザ申請の場合、イギリス国内からの申請では1年につき半額)
ここ最近のレート、1ポンド185円で計算してみて1年につき86,950~115,540円という
なかなかのお値段です。
そうなると迷うのが海外留学保険や駐在保険などに加入すべきかどうか?ではないでしょうか。
結論からいいますと、
英語に自信のある人
健康に自信のある人
その土地(イギリス)の暮らしを知りたい人
それよりも何よりも節約したい人
は、保険なし・NHSのみでもいいかと思います。
逆に言うと
英語に自信がないが、健康に関しては日本語でしっかりと理解したい人
健康に不安がある人
心配性の人
お金に余裕のある人
は、最初の1年は日本からも海外保険に加入しておいて、必要に応じて延長するなど
様子を見てみるといいかもしれません。
英語に関しては通訳の手配をお願いできる場合もあるのですが、私の勝手な憶測では
日本人のNHSの通訳はそれほどいないのでは?⇒手配に時間がかかりそう⇒
診察してもらえるまでに時間が掛かりそう、と思っています。
また身体や病気のことってプライベートなので、出来れば他人に聞かれたくないですよね。
私の場合
私がイギリスに来た頃は、まだNHSサーチャージという料金が存在していませんでした。
=ワーホリメーカーでもNHSを利用することができたのですが、私はあまり下調べもしていない
状態でイギリスのワーホリビザの抽選に当たってしまったので、
ワーホリ向けのホームページなどで必須項目として書いてある海外保険に(疑問も持たずに)
加入してからイギリスへ来ました。
1年目は全く保険を使いませんでした。
風邪をひいたりもしたのですが、なんとなく重大な病気・怪我じゃないと
使っちゃいけない気がして、風邪くらいは薬局で薬を買ってしのいでいました。
すると保険会社から2年目も継続するかどうかのお知らせが。
私はまだ英語に自信がなかったので、念のためもう1年延長しました。
すると2年目、しょっちゅう日系の病院にかかっているという元看護士さんに出会いました。
「もったいないじゃん!私、ちょっと鼻水が出ただけでもすぐ行くよ!」
聞くと、海外保険でカバーされているような日系の病院は薬をたくさん処方することで
利益をあげられるらしく、たんまりとビタミン剤やらなんやら処方してくれるらしいのです。
患者にとっては無料(保険料でカバー)で薬がもらえて、病院にとっては利益をあげられて
Win x Winな状況。
それを聞いて一度は風邪で日系の病院を訪れてみましたが、確かに噂通り、風邪薬だけではなく
トローチやら喉スプレーやらいろいろとくれました。
しかしそれだけでなく、私は2年目に大きな火傷を負いました。
(この記事の終わりにこの怪我に対する損害賠償について書いています。)
2か月以上、両手が使えないようなひどい火傷だったのですが、その時にこの日系の病院に
お世話になりました…!!
この時も包帯、消毒液、消毒液を入れて綿を浸すケース、ピンセット…と、十分すぎるほど
色々いただきました。
そんなひどい火傷だったにもかかわらず痕も残らずすっかりきれいに治ったのは、
きっと日系病院のきめ細やかな治療のおかげだったと思います。
1年目は全く保険を使わなかったのに2年目はそこそこ使ったせいか、保険会社から継続するかの
お知らせは来ず、気付いたら保険は切れていました。
それからはずっとNHSで過ごしています。
NHSだけだとどうなるのか
日本とイギリスの医療制度は全く違います。
日本は医療費の3割を支払いますが、イギリスのNHSは無料(歯科は除く)です。
日本では調子の悪い時、自分の好きな病院へ行ってすぐに診てもらえますが、イギリスのNHSではそうはいきません。
まず住まいが決まったらすぐに最寄りのクリニックへ登録します。
登録したクリニックがあなたのGP(かかりつけ医)になります。
イギリスでは何か調子の悪い時、まずはこのGPへ行かなくてはなりません。
風邪など程度の軽いものはGPでも対処してくれますが、専門知識が必要だったり
重度の病気・怪我の場合はGPを通じて病院へ行くことになります。
裏を返すと、GPに登録していないといざという時に病院へ行けないということになります。
いざという時、GPに登録していなくても緊急病院へ行くことはできますが、緊急病院では
一時しのぎの治療しかしてくれません。
交通事故などで緊急に手術が必要、というようなケースではもちろん対応してくれると思います。
私が大火傷を負った時も緊急病院へ行きましたが、何時間も待たされた挙句、軟膏のようなものを
塗られて痛み止めをもらっただけでした。
この時、私には日系病院という強い味方がいたので良かったですが、もし海外保険がなかったら
まずはGPに登録し、診療の予約をし…と何日も治療が受けられなかったと思います。
GPの登録もクリニックによっては何週間も待たされるところもありますし、診療の予約も当日に
診てもらいたかったら大抵のクリニックはその日の朝8時半に電話しなくてはなりません。
さながらアイドルのチケット予約のような争奪戦です。
その日に診てもらいたい人たちが一気に掛けるので、繋がるまで何十分も待つのが当たり前です。
もしその日の枠が埋まってしまったら、翌日あらためて朝8時半に電話しなくてはなりません。
「最近、頭痛がする」、「胃がしょっちゅう痛くなる」など緊急を要さない場合の診療予約は
何週間も待つことになります。
「頭痛がするなぁ」⇒ GP予約 ⇒(3週間待ち)⇒GP「検査してみましょうか」⇒
GPから病院へ連絡 ⇒(経験として4~8週間後)⇒ 病院から予約しろとの手紙が来る
⇒ 予約しようと電話すると「予約は一番早くて2か月後」なんていうのもよくある話
なんて感じで病院で検査してもらうまでに4,5か月かかることは大いにあり得ます。
NHSサーチャージであんなに支払いますが、日本とは全く違います!
これを知らずに「NHSがあるから大丈夫♪」と海外保険に加入しないで渡英すると
ショックを受けるかもしれません。
いつかイギリス在住・日本人女性の美容ブログに出会った時の事。
その方のブログが何というブログだったのか忘れてしまったのでうろ覚えですが、
検索で出てきたその方のブログ記事を読んでいると最新記事に「さようなら」的な、
なんだか気になるタイトルが。
思わずクリックしてみると、その方の婚約者だか夫だったか、とにかくパートナーの
イギリス人男性からの投稿で、彼女が亡くなったことを知らせる記事でした。
私が最初に読んだ記事にはすごく元気そうなお写真が載っていたし、アラフォーくらいの
方だったのでビックリ仰天。
何があったのか気になって生前の記事を読んでみると、婚約者と将来子供を持つことが
できるかどうか検査⇒問題なさそう⇒数か月後に調子が悪くなり病院へ⇒
子宮がん・子宮頸がんのような婦人科系のがん発覚、しかもステージ3か4くらい⇒
数か月前に子宮の検査をしたのに気付かなかったなんて、とイギリスの医療に不信感を
持ち、日本で治療へ⇒残念ながら数か月で亡くなられた
ということでした。
このブログに出会ったのは何年も前の事ですが、あまりに衝撃的だったので
いまだに覚えています。
不妊検査とがん検診は全く別物だとは思うので、不妊検査でがんが見つからなかったというのは
不思議ではないのですが、先に書いたように調子が悪くても検査をしてもらえるのが
数か月後だったりするのでやはり怖いです。
海外保険に加入した方がいいかも、の欄に「心配性の人」を入れましたが、
「GPの受付が何を言ってるのかわからない」⇒不安
「病名がよくわからない」⇒不安
「調子悪いのに検査するまでに時間が掛かる」⇒不安
「日本の治療と全然違う」⇒不安
こういったことが続くと、心配性な方はそれだけで余計病気を呼びよせてしまう気がするんです。
だからこういったイギリスの医療制度でもやもや・ストレスを抱えるなら、お金を払って
ストレスフリーでいた方がいいかもしれない、と思い「心配性の人」を入れました。
余談ですが、GPや病院の受付ってイヤ~~~な感じの人、結構いるんですよね…。
具合が悪いからGPや病院に来ているのに、こういった受付に出会うと更にストレス倍増です。
日本では病院の受付って優しい人・感じのいい人が多いイメージなんですが…。
GPの嫌な受付と話すのが嫌で、少々具合が悪くても我慢してしまう事もしばしばです。
歯科治療はどうなるのか
たいていの海外保険は歯科治療をカバーしていないと思います。
NHSで病院は無料ですが、歯科治療では”ある程度”支払わなくてはなりません。
また歯科はGPとは別物なので、歯科医は歯科医で新たに開拓しなくてはなりません。
GPに登録できるのは1件のクリニックのみですが、歯科は何件行っても構いません。
以前、セカンドオピニオンを聞きに通っていた歯科とは別のところへ行った際、
「あなたはこれからウチで登録されるんだから、前の歯科に戻ってはダメよ!」
と言われたことがありビックリして調べると、歯科は複数通ってもいいとNHSの
公式ページに載っていました。
歯科治療の料金は治療内容によって3つの料金設定があります。
2024年1月現在、3つの料金設定は
Band 1 £25.80
診断・検査(レントゲンを含む)・アドバイス・歯石取り(医療的に必要な場合)・
治療計画など
Band 2 £70.70
詰め物・根幹治療・抜歯など
Band 3 £306.80
クラウン・入れ歯・ブリッジなど
となっています。
Band 1は治療ではありませんよね。
そのため治療のBand 2となると少なくとも現在のレート(約185円)で13,000円強になります。
アメリカなどで全額支払うよりはマシですが、やはり日本と比べるとかなりのお値段です。
そしてこれは完全に私の個人的な意見ですが、やはり日本の歯医者さんの方が
丁寧で技術も優っている気がします。
なのでやはり渡英前に日本でしっかり治療してから来ることをお勧めします。
しかし内容によっては日本で高い治療がイギリスではお安く受けられることもあります。
そこらへんは歯医者さんのホームページなんかを比較してみてください。
おわりに
慣れない異国での生活は意識していなくてもストレスが溜まっていたりするもの。
そんな中で病気になるのは不安ですよね。
私はこちらの生活が長いのでもう「慣れない異国」ではないものの、病院関連の事はいつも
かーーーーなりストレスです。
こんなストレスを経験するくらいなら…月々1万くらい=1年で12万くらいの保険なら加入しても
いいかな…
なーんて思って保険比較サイトを覗いてみたところ。
1年で12万の保険なんてなかった!!!!
ショック――――!!やだーーー、自分の金銭感覚がこわーーーーーい!!
自分の時は10万くらいだった気がしたんだけどなぁ、日本は30年物価が変わってないと
思ったのになぁ…!!
しかも同じ「ワーホリ」でも25歳と30歳で倍も値段が違ったりして…
つーか29歳と30歳で倍の違いだった…ぎりぎりワーホリ行く方、どうか気を付けて…!!
駐在さんの値段はワーホリや学生さんに比べて高かったりしますが、会社が負担してくれる場合が
多そうなのできっと大丈夫でしょう(と勝手に思っています 笑)。
ちなみに「32歳 留学 1年」で調べてみると、一番人気は約40万円ですって。
NHSサーチャージを支払ってからの40万は…なかなかだなぁ。
皆さん、価値観もお財布事情もそれぞれでしょうから、イギリス医療の現状を知ったうえで
あなたにとって最善な選択をされますよう。
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