お金が返ってこない!損害賠償を請求したい!そんな時にはSmall Claim①

judge ロンドン基本生活

日本人的には「訴訟」なんて聞くとちょっとドキドキしてしまいますが、自分に支払われるべきお金が支払われない場合、弁護士を介することなく法的手段を取れるのがこのSmall Claimです。

何を隠そう、私もこのSmall Claimを利用しました。

しかしSmall Claimに関する日本語の記事はあまりなく、もしかすると泣き寝入りしている日本人が多いんじゃないかと思い、そんな方の力になりたくてこの記事を書くことにしました。

もし不当にお金を支払わされたり、支払ってもらえないことがあったら泣き寝入りしないでくださいね!!

追記

この記事を書き始めたのは、私の損害賠償請求に終わりが見えてきたからでした。
裁判所に認定してもらい(勝訴し)、あとは支払いを待つのみという状況になったので
この記事を書き始めました。
しかし…!!
勝訴が確定した後、6か月が経過した今もまだ支払いはなされていません。
裁判所や支払いの強制執行チームのエラーが多すぎること、裁判所という公的機関なのに
ずさんな体制であること、などが原因です。
そのため、このSmall Claimを強くはお勧めできない気持ちになってしまいました。
裁判所とのやり取りは本当にストレスが溜まります。
それでも困った時にこんな方法がある、と知っているのといないのとでは多少違うかもしれません。
少しでもこの記事が誰かのお役に立てばいいなと思います。

この記事①では、どんな場合にSmall Claimを利用できるか、賃貸物件のデポジット(保証金)が返還されない場合や怪我による損害賠償などについて書いています。

またこの記事はイングランド在住の場合を前提としていますので、スコットランドやウェールズ、北アイルランドにお住まいの方はこの記事とは異なる場合があります。

そして記事の執筆は2023年7月ですので、必ずご自身でも最新の情報をご確認ください!

 
 
 
 
 
まずSmall Claimを利用することができるのは、原則お金の支払われるべき日から6年以内となります。

以下がSmall Claimを申請できるケースです。

A)不良品を買わされた場合

B) ひどいサービスを受けた場合(例:プライベート歯科で治療を受けたが、すぐにその歯がダメになった等)

C) 返品したのに返金されない場合

D) 賃貸の家の補修を大家がしてくれない場合

E) 給料未払い

F) 自動車事故で怪我を負った場合

 
 

このうち、A、B、C、Eは最大10,000ポンドまで。

 

Dは「まだ補修されておらず、補修費用の見積もりが最大1,000ポンドまで」の場合と「補修はなされたが、されなかった期間のストレス・不便さ・余計にかかった費用(例:ボイラーが壊れていて電気ヒーターを使わなければならなかった等)などの損害賠償・最大10,000ポンド」の2タイプがあります。

気をつけなくてはいけないのは、Dに「テナンシーデポジット(保証金)が返金されない場合」は含まれない事です。

大家さんと同居している賃貸(この場合は賃借人をtenantではなくlodgerと呼びます)や学生寮のデポジットの場合はSmall Claimを利用することができます。

<以下はSmall Claimではありませんが、デポジット未返還で困っている方はお読みください>
しかし大家と同居しない賃貸物件では、大家さんはテナンシーデポジットをTenancy Deposit Scheme(TDP)に預け入れなければなりません。

デポジットがTDPに預け入れられていれば、大家さんと返金額について揉めた場合、TDPが間に入って解決に努めるサービスが無料で受けられます。

大家さんがTDPにデポジットを預け入れていなかった場合は訴訟となりますが、Small Claimは使えません。

この場合はN208という申請をしなくてはなりませんが、申請費用が308ポンドかかります。(2023年7月現在。訴訟に勝てばこの費用は相手側に請求することができます。)

政府の公式ページではN208を申請する前に弁護士に相談することが勧められています。

大家さんとのデポジットの問題はこちらを参考にしてください。(英語ですが政府による公式ページです。)

 
 
 
Fの「自動車事故で怪我を負った場合」は、車の事故によるむち打ちの場合は基本損害最大5,000ポンド+治療費など最大5,000ポンドの計最大10,000ポンドをSmall Claimで請求することができます。

むち打ち以外の怪我の場合、基本損害は最大1,500ポンドになります。

※私のSmall Claim申請はFではなかったので定かではありませんが、自動車事故以外は
 Small Claimでは申請できないようです。
 自動車事故以外の怪我の損害賠償はこちらのCitizen Advice Bureauのページを参考にして
 みてください。

基本損害というのは怪我によって被った痛みや苦痛に対するもので、決まった額がありません。

そのためFの場合のSmall Claimは弁護士さんを通した方が良いかもしれません。

<以下は怪我による損害賠償を請求したい方のための私の経験談です>
私はイギリスに来て間もない頃、レストラン勤務をしていた時に職場でひどい火傷を負いました。

尋常ではない痛みだったので上司に緊急病院へ行きたいと申し出たのですが

「レストランで働いているなら火傷くらいするでしょ」

と病院へ行かせてもらえず、その後4時間とてつもない痛みでほぼ動けないのにその場に拘束され、勤務後に行った緊急病院では全治8~10週間と診断されました。

火傷で全治8~10週間って結構な火傷ですよ!

その上司に腹は立ったものの、最初は訴訟なんて考えても見ませんでした。

しかしその話をするたびに「絶対に損害賠償請求するべき!」と周りに言われ、まずはその上司に謝罪を要求したものの無視されたので、「No Win No Fee」という制度を使って損害賠償請求をしました。

「No Win No Fee」というのは、訴訟に負けた場合、弁護士費用を支払わなくても良いという制度です。

逆に言うと、弁護士がNo Win No Feeを受け付けてくれるのは「勝てる」場合に限るとも言えます。

怪我による訴訟の場合は勝てる確率が高く、勝訴した場合は負けた相手側から弁護士へ費用が支払われるので、大抵の場合の損害賠償請求は受け付けてくれると思います。

弁護士費用を捻出できない人でも、このNo Win No Fee制度を使えば訴訟することができます。

ちなみに私がイギリスに来た当初に申請したNo Win No Feeは電話だけのあっけない手続きで、まだ渡英間もなく英語もあまり自信がなかったので、ただただ言われるがままお任せした形でした。

弁護士事務所へ出向くこともなく、弁護士事務所から分厚い書類の封筒が送られてはきましたが、後は報告もなかったので本当に何かしているのかよくわからないまま、ある日損害賠償の小切手が届いて訴訟は終わりました。

ちなみに

「レストランなんだから当たり前でしょ」

とほざいた上司(しかも日本人!)は英語も仕事もできないのに運だけで仕事を渡り歩いているような人だったのですが、数か月後にクビになったと聞きました。…納得!

 
 
 
このほか、Small Claimが利用できるのは

・18歳以上

・イギリスに住所を持っている人

・£10,000以下の金額にまつわる問題

が前提となります。

続く②の記事ではSmall Claim利用する際の費用などについてお伝えします。

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