大麻(マリファナ、ガンジャなど)について主に書いている①
ドラッグ(ヘロイン)中毒者、ジョニーについての前半②
長々と3回目を迎えてしまいました。
ジョニーをリハビリ施設に連れて行くと、自身も元中毒者だというドレッド頭の男性が対応してくれました。
個室でいつごろからドラッグを使用しているのか、どれくらいの頻度で使用しているのかなど質問されます。
もちろん氏名や住所も聞かれます。
どういった仕組みになっているのかわかりませんが秘匿性は守られるとのことで、氏名などを告げても警察に逮捕されるということはありません。
ドレッドさんとの面会を経て、毎日、この施設にて治療薬を受け取り・摂取し、だんだんと用量を減らしていく治療方法が提案されました。
ちなみにこの「治療薬」もドラッグ・覚せい剤などと同じく罪に問われるドラッグに属しています。
そのため、通常の処方薬のように2週間分、4週間分などまとめては受け取ることができず、毎日施設に通って、スタッフの前で摂取する必要があります。
そうしないと過剰摂取や転売の可能性があるからです。
ジョニーは9時-5時の仕事をしていました。
リハビリ施設は5時半に閉まってしまいます。
仕事を終えると走るように施設に向かってなんとか滑り込んでいたようですが、少しでも残業をしてしまうと間に合いません。
1日逃してしまった程度であれば、なんとか我慢できるそう。
しかし数日連続で逃してしまうと、イライラしてくる。
いてもたってもいられず、不安が押し寄せてくる。
ある時、仕事の残業や、交通機関の人身事故などが重なり、ジョニーは4日ほど治療薬を逃してしまいました。
4日目は帰宅してとにかく眠ろうとしたらしいのですが、悪夢が止まらない。
ジョニーは泣きながら私に電話してきました。
しかし私はただ励ます以外、どうすることもできない。
ここでくじけてはこれまでの頑張りが無駄になる、頑張れ、頑張れ。
ジョニーがどこからドラッグを入手していたのか知りませんが、ジョニーはやけに知り合いの多い人でした。
英語のレッスンで使っていたカフェや、レッスン後の駅までの道などでも道行く誰かに挨拶することが何度もあり、どれだけ顔の広い人なんだと私は内心驚いていました。
英語を私から習うくらいなので、まだこの国にきて日は浅かったはずなのに。
何回かは治療薬を逃してもなんとかとどまっていたらしいのですが、私の気付かない間にジョニーはどこかから治療薬と同じ成分の粗悪品を手に入れていました。
施設から投薬されていたのは錠剤でしたが、怪しい筋からのものは液体で、咳止めシロップの入っているような茶色のガラス瓶に入っていました。
何日か治療薬を逃してしまったある夜、部屋中にゴキブリがいるような感覚に襲われどうしても耐えられず、その粗悪品を手に入れたというのをしばらくしてから知りました。
一進一退を繰り返しながらも、リハビリ施設から投与される治療薬の用量は少なくなってきていました。
5年以上前の話なので定かではありませんが、確か最初は8㎎の錠剤だったのが4㎎になり、2㎎か1㎎になっていったと記憶しています。
しかしこの最後の2㎎の段階で、入手経路のわからない液体を使ってしまい、元に戻ってしまうことをジョニーは何度も繰り返していました。
時にジョニーは激高し、ヘロイン摂取のための注射器(未使用)を私の目の前で取り出して
「これで血管に空気を注入して死ぬ!」
と、自身の腕に突き刺そうとしたことがありました。
なんとか止めようと、私は必死でその注射器をジョニーから奪い取ろうとしました。
奪い合っている中で、いつの間にか私の手から血が出ていました。
注射器の針で傷つけてしまったのです。
後から聞くと、その注射器も出どころの良くわからない、怪しい筋から入手した注射器とのこと。
ジョニーは新品だから大丈夫だと言いましたが、私はゾッとしました。
薬物の回し打ち(注射器の使いまわし)でエイズやC型肝炎などに感染するケースが多いことを知っていたからです。
確かにその注射器は個包装されていましたが、そんな出どころのわからないものは洗って転売されている可能性も否めないと思ったのです。
自分の事を偽善者とは言いたくありませんが、私の「正義感」は中途半端でした。
正直、こんな揉み合いで不治の病に感染するなんてたまったもんじゃない、と思いました。
エイズやC型肝炎は一度感染したら一生付き合っていくような病気です。
これが1度目の後悔でした。
かかりつけの医師のもとへ行くと、性感染症を検査してくれる施設の予約を取ってくれました。
Mortimer Market Centreというクリニックです。
私が検査したかったエイズやC型肝炎のほかにも、クラミジアや淋病といった一般的な性病検査や、レイプなど望まない性行為を受けた場合の緊急避妊ピルの処方なども行ってくれます。
この記事を書いている2020年9月現在は新型コロナの影響で電話での問診が主のようですが、通常はGP(かかりつけ医)を通さず、自身で予約することもできるようです。
もし万が一、なにか心配なことがあったら時間を置かずにこのクリニックに電話してみてください。
異国でこういったクリニックのお世話にならなくてはならない状況というのは不安だと思います。
しかしこのクリニックもドラッグのリハビリ施設同様、内密に検査・治療してくれます。
オンラインで私の病院の記録を見てみても、この時の記録は残っていません。
事件後、すぐに検査を受けた時に
「すぐに症状がでないこともあるから、半年後にもう一度検査を受けて」
と言われました。
事件直後と半年後の2回の検査はいずれも陰性でしたが、半年待っている間は気が気じゃありませんでした。
心から愛しているパートナーや家族が中毒者だったとしても、この過程を支えるのはとても辛いものだと思います。
中途半端な正義感でどうにかできるものではありませんでした。
③もなんだかんだ長くなってしまいました…。
地獄の後半戦は④へ…!!
コメント