変態に遭遇した話

ピザの箱

あれは何年も前の冬のこと。

 
 
 
クリスマスの翌日、12月26日のことを「ボクシング・デー」と言います。

「ボクシング」はスポーツのボクシングではなく、”箱”の”Box”=”Boxing”で「箱(プレゼント)を開ける」という日です。

イギリスのクリスマスは24日・クリスマスイブにはお店が時短で閉店し、交通機関も0時を回る前にはストップ。

25日・クリスマス当日は基本的にどのお店も閉まっていて、交通機関も全面ストップです。

そして26日のボクシング・デーには年末年始のセールが一気に始まります。(ここ数年はセールも前倒しになってきていますが、基本的には26日スタート。)

何年も前のことなので、誰と・何のために会ったかも忘れてしまったけれど、私は26日のボクシング・デーにどこかへお出掛けして、夜の10時くらいに帰宅しました。 

 
 
 
当時、私は団地のようなところに住んでいて、自分の棟の入り口は表通りからは裏手にありました。

寒いなぁ、といそいそ家路につき、裏手に回ったところで自分のビルの入り口に誰かが立っている人影が見えました。

団地のような場所ですが、各ビルにはオートロックがついています。

訪問者や配達などはビルの外でいったんピンポンを押し、ドアを開けてもらってからビルの中に入ります。

自分の知らない人が中に入れず外に立っていると、少しドキッとします。

顔を知っているご近所さんであればためらいなくドアを開けてあげられますが、知らない人はやっぱり怖いんですよね。

 
 
 

私自身、職場の上司にストーカーされたことがあり、この外のドアを開けられてしまったせいで非常に怖い思いをしたことがあるんです。

おそらく誰かが建物から出ていった時もしくは中に入ろうとドアを開けた際に入り込み、私の家のドアを
「このドアを壊してやる!顔が見たいだけなんだ!!」
とパンチやキックし続けられ、震え上がってしまいました。

怖くて涙が止まらず、電話で「お願いだからやめてください」と懇願していると、ご近所さんが警察を呼んでくれました。

※一度、職場で倒れたことがあり、その上司が緊急病院に付き添ってくれ家まで送ってくれました。その時はこんなことが起こるとはつゆ知らず…。ちなみに警察の話によるとこの事件の時、上司はかなり酔っていたそうです。

 
 
 

こんな経験もあることから、知らない人が中に入れないのを見るとドキッとしてしまうんです。

自分もそのドアを開けないと家に帰れない。

でもドアを開けちゃうとこの人も入ってきちゃう…。

誰かを困らせたくありません。

入り口に近づいてくると、だんだんと見えてきたその人影はビザの配達人でした。

ほっ。なーんだ、ピザのデリバリーか。

ピンポンしてるけど、返事がない様子。

私がドアの前に来ると、その配達人は「助かった!」という表情を浮かべました。

かなり背が高く190㎝以上ある大柄な人で、顔は中東出身っぽい髭の男性でした。

私がドアを開けると
「自分で注文したくせに応答してくれないんだよ、家にいるんだろうか?」
なんて言っています。

「もしいないなら私が食べちゃおうかー」
なんてジョークを言いつつ階段を上り、配達人は右手へ、私は自分の家のある左手へ曲がりました。

 
 
 
自宅に着き、お茶でも飲もうとキッチンでお湯を沸かしていると、誰かが家のドアをノックしてきました。

え?

ドアを開けると、さっきのピザ配達人。

「ピザあげるよ。」

ええ!?

「やっぱりお客はいなかった。君が食べないなら、捨てるしかないから。」

えええ!?!?

いやいやいや、そんなこと言われても…。

でも配達人も

「ピザ、いらないの?どうせ捨てるんだから食べてよ。」

と食い下がってきます。

彼がビザ保温バッグみたいなやつを開けて、私に取るよう促してきました。
 
ま、タダでくれるっていうならもらっとくかぁ~?とバッグに手を入れると。

…ない。

ほんのり暖かいけれど、中には何もない。

あれ、このバッグ、二重構造かなにか?

脳みそが混乱しているところへ、配達人がなにかモゴモゴ言っている。

「あ~…ウソなんだ。ただ君と話したかったんだ…チ○コは好き?」

 
 
 
!?!?!?!?!?!?

 
 
 
おそらく1秒、私は凍り付き、脳内で血がぶわっと逆流しつつ30周ぐらい駆け巡ったような感覚に襲われました。

 
 
 
「F**K YOUUUUUUUUU!!」

 
 
 
即刻ドアを閉めました。

きもいきもいきもいきもいっっ!!!!

いや~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!

怖~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~い!!!!

ドアを開けた時は気付かなかったけれど、後から思えば階段を上がった後、奴は私とは逆方向の右へ曲がったはず。

私の家はビルの一番端っこで、ここのドアをノックしてきたという事は私がどのドアへ帰るか見届けていたということ…怖!怖!!

中東・アラブ人っぽい人に見えたけれど、イスラム教の人がこんなことするか…?

もしかしたらアラブ人ではなかったのかもしれない。

とりあえずこのピザ屋は、Papa John’sというアメリカ系の会社。

その後、友人にこの話をしたら、こちらのAVでは配達の人を誘惑するという設定がよくあるとのこと。(私が誘惑したわけじゃないけどね!!怒)

フィクションの世界を実践してくれるなよ~~~~~!!

本当はPapa John’sへ苦情の電話を入れるなりした方が良かったのでしょうけど、当時の私はロンドナー歴が甘く、ただただショックでそこまで考えが及びませんでした。

もしその考えに至ったとしても、当時一人暮らしだった私は、家も知られているので怖さの方が勝ってやはり何もしなかったかもしれません。

そんな私も上司のストーキングやら、こんな経験やらを通じて、すっかり強くなってしまいました。

もし似たような経験をして困っている女性がいたら、いつでも連絡ください。

何かのお役に立つかもしれません。

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